【背景】
本技術は自然現象である岩石の風化を二酸化炭素吸収技術として捉え、その進行を後押しするものです。令和8年には、日本の地質・資源条件に即した評価手法(炭素会計)および測定・報告・検証の標準化に資する研究開発を行う岩石風化促進技術研究組合(J-ERW)も発足し、いよいよ社会実装の段階に入ってきました。本事業は鹿部町民及び鹿部町役場の皆さまのご理解とご協力のもと、継続して実施してきた本プロジェクトの、町民向け現地見学会として開催されるものです。なお、一般公開は2024年度から年1回開催しており、今年で第3回になります。
【開催日時】 令和8年8月23日(日)
・10(13):00 鹿部町役場前集合(雨鱒川旧坑口に移動)
・10(13):40 実験概要説明(坑口~折戸川A点)
・12(15):00 町役場前で解散
【参加人数】
午前の部4名、午後の部2名、計6名
【見学の概要】
まだ、暑さが残るものの雨の心配はない好天となりました。鹿部町役場に集合後、鹿部町役場の協力のもと車両に分乗し、旧精進川鉱山の坑口に向かいました。
坑口の入口は塞がれているものの、強酸性の地下水が流出しています。その直下にプラスチック製の樽を仮置きし、そこに、炭酸カルシウムが主成分であるホタテの貝殻の粉末(ホタカール:鹿部町産)を投入、攪拌の後、ポンプで川に流し入れます。(写真1)今回、玄武岩粉ではなく、ホタテの貝殻を使ったのは、その主成分であるカルシウムが海に到達後の二酸化炭素吸収と川の酸性の中和効果双方の確認を目的としたもので、将来は玄武岩粉との適切な組み合わせを探る基礎情報になります。機材の工夫と作業計画は、北海道大学を中心とする学生チームで十分に検討され、実施されました。

写真1 旧精進川鉱山中切坑口と実験器具の設置状況
現場では、佐藤教授から、二酸化炭素吸収の理論的な背景から、排出量取引など本技術を取り巻く情勢や今後の展開について説明がありました。町民の皆さんからは、投入後、鉄の沈殿により水の変色(赤黄色)が起こる理由やその効果、投入量や二酸化炭素吸収の測り方、など多くの質問があり、それらをきっかけとした対話が行われました。(写真2、3)その中でも、現在、魚影が消えている雨鱒川、折戸川に魚が戻ることへの期待が話題の中心でした。下流で鉱山廃水の影響がない川との合流部には今もサケが遡上してくること、雨鱒川の由来から、昔はたくさん魚がいたのだろう、など、地元ならではの知恵もたくさん戴きました。また、1940年代後半まで存続した鉄道と鉱山の関係などのお話は、とても貴重で地域を理解するための情報として興味深いものでした。中流域では、早稲田大の学生が行うサンプリングやpH測定の様子を見学戴き、(写真3)本実証試験の全体像をご理解いただけたものと思います。印象的でしたのは、実証試験がこのような厳しい条件の山中で行われていたことへの驚きとそこから伝わる学生の頑張りへの賛辞が寄せられたことです。
鹿部町では、本公開以外にも年度末には、漁業協同組合や商工会などの町の主だった皆さまに説明の機会を設け、継続的にご説明と対話を諮っており、引き続き、本事業と地域の共存を検討してまいります。

写真2 住民の皆さんへの説明(川岸付近)

写真3 住民の皆さんへの説明(山林への散布)

写真4 精進川、雨鱒川合流付近での説明(水質検査)
【文責・写真撮影】J-ERW広報担当 竹田宜人(北大)
